ゲミュート

一口に「ゲミュート」と言っても、この世界においては幾つかの意味がある。

  1. ゲミュート大陸
  2. 南洋列島を含む周囲の島々を含めた地域の総称
  3. ゲミュート国
  4. 大陸北部のディアマント地方に対する大陸南部の呼び名
  5. 心(大陸中部の方言)
  6. 王族の姓

ゲミュート大陸

霧の内側で最も広い陸地であるため「大陸」と呼ばれているだけであり、この言葉自体に大した定義などは無い

本土といわれることもある。

 

東部

緑が最も豊かな地域。桜花地方ともいわれる。

ゲミュート第二の首都ともいわれるアミーゴシティを境に東西に分けられ、更に東側はラロ=シウダーの町で南北に分けられている。春になると角真珠が空を飛び、人々は彼女への感謝の祭りを催す。東側には森や花畑、農村などがあり多くの植物がみられる。特に北側に一年中咲き乱れる桜は有名。

一方アミーゴシティから西側は、ヴァント山脈を背に穏やかな草原や一部では砂漠が広がり、鮮やかな東側に比べれば比較的大人しい印象を受ける。

この地域の人々は一見素朴だが感受性が豊かで、かつてこの地方で話されていた言語はそれを表したように表現の言葉の数が非常に多く、ゲミュート語を作る際はこの言語の扱いに最も難儀したという。

山葵の家があったプラード村は、この地域の南の端に存在する。

南部(オチェアーノ海)

大陸の南部は、広大なオチェアーノ海に突き出している。かつてこの地域を拠点にしていた戦の神獣・アルファルドは、今ではスーマラン海底洞窟の奥部に眠るとされる。

東側のサッビャビーチ、中央のリーヴァデルタ、西側のカラマール=プルポ港の三か所から海に出ることが可能だが、現在この三か所(特にカラマール=プルポと東部への入り口であるサッビャビーチ)を安全に繋ぐ陸路は存在しないため、殆どの旅行者はこの広い海を船で横切ることになる。

昔と違い航路の途中にある島々に立ち寄るものは少ない。観光客は南洋列島に奪われ、「陽気な人ばかりで空も海も清々しいほど真っ青な南の島」といういかにもリゾート地に向いたイメージに反して、どの町も大抵静かで寂れている。

中部

首都セレーブロ、ゲミュート一の港町カラマール=プルポ、クジャワの村とフォレ森、そして、現在もディアマント地方からの侵攻に備え厳戒態勢が敷かれるリスト警戒区域と、対立する両地方の間に割って入るように聳え立つヴァント山脈。全く顔色の違うそれらが存在する地域。

古代より多くの歴史的事件の舞台となったが、それと同じだけ戦火にも巻き込まれたために当時の姿をそのまま残す建造物は非常に少ない。

生真面目だったりプライド高い人間が多く、また陰湿ともいわれるクジャワ族の村もあるため他の地域と比べて大した温かみはないが、唯一カラマール=プルポ港だけは、南部や東部、更に南洋列島の人々にとっての玄関口でもあるため、まるで彼らに合わせたかのように活気に満ち溢れている。

西部

自然の険しさを示すような地域。南北に並列するドゥルール洞窟 ― レガメ大橋のラインで東西に分けられる。

特に西側はごつごつとした岩肌が剥き出しの高地となっており、植生なども大きく異なるため文化的は少々特殊。とはいえ、神獣厄災の折に昴琥珀によって助けられた民が建てた塔の影響は強く、住民たちはそのような違いを全く気にせず、少々お節介ともいえるほど困った人に対して非常に親切に接してくれる。

東側はセレーブロに近く、それなりに人の往来もあるため、たまに中部の西端と間違えられることがある。

北部(ディアマント地方)

ヴァント山脈を挟んで北側。夏でも暖かさを感じられることはなく、冬はどの町ももれなく猛吹雪に襲われる残酷な地域。特殊な立場にあるため地方名で呼ばれることが多く、これに対して大陸の南半分をゲミュート地方と呼ぶ。

邪神に操られたアルファルドが太陽を飲み込んだ際、角真珠の誤解によってカローナ・ズヴィズダーがこの地に追放された。これを発端に勃発した神獣厄災の最終段階では、神や角真珠に反感を抱く者や邪神を支持する者たちの拠点となり、戦後カローナは神と和解したものの、人間たちは現在に至るまで対立状態にある。

こうした歴史からディアマント人に対する差別じみた偏見は根強い。確かに作り笑いが嫌いで冷たく見えることはあるが、実際はシャイなだけで友人や家族への愛はとても強く、少なくとも外面だけ優しく振舞う中部の人に比べれば非常に温かい。また、男女問わずやたらと美人が多い。

 

現在、両地域を結ぶヴァント山脈の通行には資格が必要である。※メッセンジャーを除く。

その他

ディアマント北方沖には穏やかな風景の島があり、邪神は毎回この地に封印されている。どういうわけか、この島への長期滞在を試みる人間はみな精神に異常をきたす傾向がある。

また噂話にすぎないが、この島の真東・ちょうど東部地域の北方沖には、同じような様相の詳細不明の島が浮かんでいるとされる。

 

大陸の遥か南には南洋列島と呼ばれる島々が存在。400から600年前の間にゲミュート人に発見されるまでは完全に孤立した地域だった。現在ゲミュート国の一部ではあるが、ディアマント同様本土からの支配は及んでいない。本土と数回戦火を交えたことがある。

或いは本土以上に自然が豊かで、年中多くの観光客で賑わう。

 

これらの地域が存在する空間は、周りを非常に濃い不思議な霧によって隙間なく囲まれている。存在が明らかになった頃から何人もの冒険家が霧の外へ出ようとしたが、誰一人としてこれを抜けることはできず、「いくら前に進もうと全く景色が変わらないのに後ろを向けばすぐに戻れる」という謎の性質もあって、全員もれなく無事に生還している。

例外として、ペングウェンだけは霧の内と外を自由に行き来することができる。

ゲミュート国

建国は本編の1332年前。その18年前に終息した神獣厄災で人間たちの長を務めていたケーニヒ・ゲミュートによって、16年もの統一活動の末成立した。彼はこの時初代ゲミュート王に即位し、以降はその子孫が代々国王の座を世襲している。

ゲミュート暦504年頃。邪神によって起こされた全国的な混乱が終わりを迎え、その終止符を打った国土家が管領に就任。以来2~3回の滅亡を経験しながらも、やはりこの一族が管領を務め、国王に代わり政務を執り行っている。

※建国時ディアマント地方は無視されており、正式なゲミュート国への参加は遅れた。

 

ゲミュート共通語

ゲミュート国統一後は、まず邪神登場で何百にも分けられた言語を一つに纏め、共通言語を制定することが最優先課題とされた。

ケーニヒによって直ちに各地の言語学者が集められたが、思いの外言語間の壁は厚く、特に東部と西部の一部言語は中部の言語とは全く異なる発音や文字文法を扱うため、大いに難儀した。結局、このうちの一つを“基準”として、その他は何一つロクに纏められないまま「ゲミュート語」が成立した。他の言語は「方言」として扱われる。

単語数は非常に多いが、以上の経緯からその殆どは意味が重複しているだけのものであり日常で扱う数は全体数に比べれば非常に少ない。一応各言語の特色は残されており、特に東部言語のひとつである桜言葉の“無駄に多い”表現などは、現在でも文学などに大きな影響を与えている。

山葵たち登場人物のほぼ全員がこの言語を扱う。

政治

504年(頃)以降、政務は管領の国土家が担う。現在国王が完全に実権を手放しており、国土家が事実上の国家元首となっている。ゲミュートの政治は、管領とその他国民に選ばれた人物12人の会議、その下に位置する議会の二つの機関を通して執り行われる。