ゲミュートで今注目されているスポーツ、それは決闘である。
80年ほど前までは、「一方がなにか名誉やそれに準ずるものを掛け公平な条件のもと殺し合う」という、今から考えれば野蛮な勝負事であった。それから80年の間に、大幅にルールを変更しスポーツとして復活した。
毎年10月から3月に行われる。ディアマントを除くゲミュート各地で数回の予選が行われた後、予選の結果に応じてそれぞれに加算されるポイントを一定以上得た者たちによる決勝大会が行われる。ポイントさえあれば決勝大会には出場できるため、どの予選に出るかは選手の自由である。
この決勝大会で優勝した者は「王者/チャンピオン」と呼ばれ、一年間多くの人に持て囃される。決勝大会の出場選手には翌シーズンの開始時にシードポイントを与えられ、少ない予選出場回数でも決勝大会まで勝ち上がれるようになっている。
大抵の選手がこれを利用して戦う回数を抑える中、白銀一虎は「参加することに意義がある」という思想から、毎年出られる限りの予選に出場している。前述の「制限」があるため、王者による初心者狩りという醜い現象は起こらない。
運営によれば、5回王者となった者は「殿堂入り」として“名誉の出場停止処分”が下されることになっているが、未だこれを成し遂げたものはいない。
因みに、「制限」のルールがある中でこの“出場停止”が成立する理由として、「格下に対し己の力を自在にコントロールする術が完璧に身に着いている」ことが挙げられている。